桜花舞うとき、きみを想う



その数秒間は、ぼくにとっては永遠のようにも感じられた。

靴音が近づいては遠ざかり、また近づいて立ち止まる。

ぼくが隠れている木箱の真横を陰が横切ったときは、思わず声を上げそうになった。



やがて声の主は小声で何かを言いながら、部屋を出た。

そのときに、当然ではあるが電気を消して行ってしまったから、その後が大変だった。

手探りで木箱の迷路を抜け出そうとするも、箱の角に体のあちこちをぶつけてしまう。

さらには、積まれていた箱が、体がぶつかった拍子に落ちてきたものだから、その音でまた誰か来やしないかと、気が気でなかった。

「いててて……」

落下した箱の直撃をくらったぼくが、なんとか安全な場所まで出たとき、

「誰だ」

扉が開くと同時に声がして、間髪入れずに電気がついた。

万事休す、逃げ隠れする隙もなく、ぼくはきつく目を閉じ、観念した。