ラムネ製造機と言われても、すぐにはピンと来なかった。
しかし見てみると、部屋の片隅にはたしかにラムネ瓶がぎっしり詰まった箱があり、何よりもこの甘い匂いがそれが真実であることを物語っていた。
機械とは言ってもそれほど大きなものではなく、大人の女性の背丈ほどの、キリンのような形をしたひょろ長いものだ。
頭の部分に取っ手がついているから、それでラムネを瓶に充填するのだろうと推測できた。
「驚きました。召集される前、地元ではあんなに皆が甘いものに飢えていたのに、あるところにはあるものなんですね」
「一般人となんか比べるなよ。国を命がけで守ってる軍人が優先になるのは当然さ」
磯貝さんの言い方には、少し一般市民を見下したような響きがこもっていて、いい心地がしなかった。
「それからな、おい、ちょっと耳貸せ」
磯貝さんがぼくの肩を抱き寄せ、耳元に顔を近づけた。
「ここだけの話、病気になるとカルピスも飲めるんだ」
「カルピス!?」
「しっ、馬鹿!声がでけえよ」
食糧不足になって以来、すっかり町中ではお目にかかる機会がなくなったカルピスに、まさかこんなところで出会おうとは。


