桜花舞うとき、きみを想う



思えば、軍艦に乗り込んでから部屋の外に出るのは初めてだった。

扉を開けると外はすっかり暗く、月や星が静かに輝き、ひんやりとした海風がぼくの頬を撫でた。

そのときぼくは、妙な違和感を感じ視線を上げた。

「えっ」

視線の先には本来あるはずのものがなく、代わりに地響きのような唸りと波の音が耳に飛び込んで来た。

ぼくは動きが止まり、持っていた食卓の端が鈍い音を立てて床に落ちた。

(港が……景色が……)

見えるはずの港の光が、まったくない。

港側に面していた烹炊所前には、今はただ漆黒の闇が広がるばかりだった。



「中園、どうした」

何事かとっさには理解できず闇を見つめるぼくに、宮崎さんが言った。

ぼくはそれにどう答えていいかわからず、ただ、宮崎さんの目に視線を移した。