桜花舞うとき、きみを想う



「それでは、中園くんの仲間入りを祝して!」

かんぱーい、と、ぼくが並べた卓を囲んだ主計兵たちの声が響いた。

乾杯といっても磯貝さんが言っていた通りに酒はなく、緑茶だった。

「ありがとうございます。がんばります」

ありきたりな言葉を述べると、温かい拍手がぼくを包んだ。



磯貝さんは、先輩方と交流しろと言い残し、ずいぶん遠くの席で楽しそうに雑談に興じていた。

ぼくは正直、朝の移動に次ぐ作業の連続に疲れ、めまいを感じていたので、すぐにでも休みたいと思ったが、すぐに若い新入りに興味を示した先輩兵に囲まれた。

「酒もない、時間もないで悪いな」

「いえ、貴重なお時間を割いていただき光栄です」

疲れているとはいえ、まさか配属先でこんな風に歓迎してもらえるなど考えてもみなかったことであり、ぼくは素直に嬉しかった。

大きいとはいえない食卓の周りに男たちが肩が触れ合うほどの近さで居並ぶ光景は、エサに群がる猛獣のように暑苦しかったが、居心地は不思議と悪くなかった。

たわいもない話に盛り上がり、上官の酌(といっても緑茶だが)をし、ぼく自身も楽しい時間を過ごすうち、大皿に盛られた料理は、みるみるうちに猛獣たちの腹におさまっていった。