桜花舞うとき、きみを想う



仕事がひと段落し、さてこれからどうするのかと思っていたところへ、ぼくの歓迎会をしてくれるとの声がかかった。

「皆さんお忙しいのに、悪いですよ」

「忙しいからこそ、そういう息抜きがしてぇんだよ。皆、ハメはずす口実ができたって喜んでんだから、付き合え」

磯貝さんが、笑いながらぼくの腹に肘鉄を入れた。

それは見事にみぞおちに決まり、ぼくは腹を押さえてうずくまり、

「ハメはずすったって、酒はねぇけどな」

と磯貝さんが高笑いするのを、うめき声をあげながら聞いた。

磯貝さんは軽くやったつもりかもしれないが、彼は自分の力を完全に理解していなかった。



歓迎会は夜食の準備に入るまでのわずかな時間、烹炊所中央に卓を置いて開催すると聞かされ、ぼくは主賓にもかかわらず、その準備に追われた。

「ばかやろう!横に並べたら全員座れねえだろ。縦だよ、縦!」

「中園!大皿持ってきてくれ、いちばんでかいやつ!」

次々に飛んでくる指示を右往左往しながらこなすうち、ぼくは本当に歓迎されているのかという疑問がふつふつと沸き起こったことは、言うまでもない。