桜花舞うとき、きみを想う



軍艦と聞いて、ぼくは武蔵のような巨大な戦艦を予想していたが、港で案内された先にあった軍艦は、それほど大きくはなかった。

「がっかりしたかい」

停泊中の艦の前に並んで立っていた村井少尉が、ぼくを小突いて耳打ちした。

「いえ、そんな」

「この船は巡洋艦といってね、まあ空母なんかと比べたらそりゃあ小さいし古いが、いい働きをするんだよ。これまでもレイテやフィリピンで……―」

艦の経歴や功績を話す村井少尉の顔は、港でゆらめく海の反射に照らされて、夢を語る少年のように輝いていた。



少尉によると、この艦は先の戦闘で負った傷の修理を終え、今度は沖縄へ向かう予定だという。

「沖縄、ですか」

地図を思い浮かべてみたが、ざっくりした位置しかわからず、距離感が掴めなかった。

しかし少尉は気にする様子もなく、

「さっそく烹炊所に案内するよ。来てくれ」

と、慣れた足取りで巡洋艦に乗り込んだ。