「万歳!」
区長の掛け声で、見送りの人々が万歳三唱をした。
ぼくは頭を下げて、それを聞いた。
「がんばれよ、礼二くん」
「武勇伝を聞かせてくれよな」
次々に激励の言葉をいただき、ぼくはそれらのすべてに笑って頷いた。
「どこに配属が知らんが、健康には気をつけてな」
「広田も、明日は我が身かもしれん。心の準備をしておけよ」
広田は珍しく涙目だった。
開戦当初とは違い、その頃には誰も、皇国のために命を捧げろと言わなかった。
帰って来いと言った。
建前で万歳とは言うものの、世間の戦争に対する接し方には、明らかに変化があった。


