出発の朝はひどく冷え込んで、外は雪が降っていた。
「礼二、区長さんより遅れたら大変よ」
「はい、もう行きます」
ぼくはまだ薄暗い早朝の道を、格好悪い国民服に身を包んで、小さな鞄を手に歩いた。
壮行会が開かれる神社までの道のりに、ひらりひらりと雪が舞う。
「寒いなぁ」
見上げると、空は厚い雲に覆われ、雪は当分やみそうになかった。
「な、アヤ子。見てみろよ。桜みたいだぞ」
ぼくの後ろにくっついて歩いていたきみが、空を見上げた。
真っ白な氷の花びらを見つめるきみは雪の精のようで、とても美しかった。
そんな姿もこれでしばらく見納めと思うと、さみしかった。


