「帰って来たら、エノケン見に行こう」
「うん」
「ついでに浅草で寄席を見て、うまい丼を腹いっぱい食ってさ」
「うん」
「親に土産をたくさん買って、疲れたなんて言いながら歩いてさ」
「うん」
「まあ、そんなに買い込んで、なんて母さんに叱られるんだ」
「ふふ、いいわね」
きみの肌は、甘い香りがした。
ぼくと同じ風呂に入っているのに、どうしてこんなにいい匂いがするのか不思議だと思いながら、ぼくはこの匂いを忘れまいと、しっかり記憶に刻み込んだ。
このままこうして抱き合っているうちに、戦争が終わればいいのにと思った。
そうしてぼくは、いつの間にか眠りについていた。


