桜花舞うとき、きみを想う



ふたつの通知書は、永山さんの言う通り、どちらも間違いなく中園家宛てだった。

1通は、確信していた通りの戦死公報だった。

そしてもう1通は、

「礼二、何だったの」

覗き込む母に、とてもではないが、今、見せられるものではなかった。



ぼくが無言で永山さんに目をやると、永山さんはまるで逃げるように慌てて自転車に跨り、

「それでは、次がありますので」

と去ろうとした。

「ちょっと」

ぼくは永山さんの腕を取って、引き止めた。

「アヤ子、お母さんと一緒に中に入っててくれ。ぼくは永山さんに話がある」

ときみに告げ、ぼくは永山さんの腕を引っ張り、人目につかない路地に入った。