桜花舞うとき、きみを想う



通知書を差し出す永山さんの手を見て、ぼくは、

「どっちですか」

と訊ねた。

それというのも、永山さんは、なぜか2通の通知書を手にしていたからだ。



ぼくの質問に、永山さんはぼくから視線を外して、

「あ、ええと。その、どちらもです」

と言った。

母は緊張した面持ちのまま、なかなか動こうとしないので、ぼくが代わりに通知書を受け取った。

「どちらも?」

そう聞いてもぼくは、とっさには何も疑問に感じなかった。



その宛先を見るまでは。