100m走にも何回か出たことあるから、緊張はするけど場慣れ分でドキドキは少ない。
「愛璃〜!頑張ってね!」
ふと聞こえた方…
上の応援席に顔を向けると、手すりから身を乗り出している女子陸部メンバーの姿が。
今競技中らしい祐ちゃんと亜美の姿はなかったけど、4人の声援がすごく大きな声となって、私に届いた。
『うん…!』
私は少し強張った頬の力を抜いて大きく頷いてみせると、スタートラインに並んだ。
スターティングブロックをセットして、
合図を待つ。
「よーい…」
…腰を高く上げて、体重を前にかける。
この瞬間に、残ってた緊張も、
全部吹き飛んだ。
―――パァ…ンッ!
ピストルの音が響いて、地面を強く蹴る。
風が目にしみて、少し痛い。
後はもう一生懸命走って、気付いたら終わってしまった感じだった。
…結果は、自己ベスト更新!
海ちゃんにも勝った!
自分でもびっくりするようなタイムだったから、すっごく嬉しかった。
