「あ〜疲れた〜!」
何も知らない祐ちゃんが走り込んで来た。
肩で息をつきながら、ゴールから少し離れたところに腰を下ろす。
『…お疲れ〜!』
私も、強ばる頰を無理矢理動かして笑顔をつくり、祐ちゃんの隣にゆっくりと腰を下ろした。
「あぁ〜やっぱ走るのダメだ〜」
『…はい、タイム!そんな遅くないよ〜』
「ありがと!
でもやっぱ陸部としてはさ〜…」
紙にタイムを記録し始めた祐ちゃん。
あの二人にもう一度視線を向けてみると、まだ何かを喋ってるみたいだけど、遠くて声は聞き取れない。
でもこっちを見てこないところをみると、もう祐ちゃんの話題じゃないんだろう。
<性同一性障害>
…時期が悪かったと思う。
最近、ドラマの中で、性同一性障害の子の話が中心だったから。
私自身、その障害名をそのドラマで初めて知った。
…でも祐ちゃんが性同一性障害か、なんて難しい話はわからないし、思ったこともなかった。
