…こ
「答えになってねぇよ!てめぇふざけてんのか!!
あたしはこー見えても真剣なんだよ!」
あたしはここがカフェであることも忘れて鴇田の胸ぐらを掴むとグラグラ揺すった。
周りの客たちがぎょっと目を剥いてあたしたちを注目する。
「朔羅さん、落ち着いて!」とキリさんに宥められてあたしは、はっとなって慌てて席へ逆戻り。
鴇田はあたしの暴挙にも動じず、何事もなかったかのように冷静な仕草で襟元を直しながらタバコを吹かせている。
「私はふざけてなどいませんよ。
そもそも極道の男と言うのは女を大切にする人種なんです」
女を大切に―――……?
「まぁ中には例外も居ますが。…大狼とか、大狼とか大狼とか!あいつは問題外だが」
鴇田はわなわなと手を震わせて眉間に皺を寄せる。
鴇田…怖ぇえよ。どんだけタイガを嫌ってんだよ。
とドン引きしていると「コホン」鴇田は再び冷静さを取り戻し、
「まぁ仁義を重んじる我々はこうと決めた女を裏切る真似はしません。
あいつは良い意味でも悪い意味でも極道ですからね。
信じてやったらどうですか?」
強弱のない淡々とした言葉で言われてあたしは目をぱちぱち。
こうと決めた女を裏切る真似はしない―――……
「おめぇ、その言葉マジで言ってんのかよ。全然心篭ってねぇぞ?」
「本気です。ついでに私はいつも真面目です」
鴇田は流し目でちらりとあたしを見て、まだだいぶ残ったタバコを灰皿に押し付けた。
「時間切れだ。キリ、戻るぞ」
と伝票を手にして立ち上がった。
キリさんの返事を聞かずして勝手にお会計のレジに向かってるし。
「はいはい」とキリさんが苦笑いで立ち上がる。鴇田の態度に慣れていそうだ。
相変わらず…マイペースなヤツ。
ちょっと呆れたように鴇田の姿を眺めて、それでもすぐにはっとなった。
「あ、あのお代!」
慌てて財布を取り出して立ち上がったキリさんを見上げると、
「いいんです。気にしないで♪」キリさんは色っぽくまたもウィンク。
鴇田の後を追って店を出ようとしていたが、思いなおしたようにあたしに向き直ってちょっと体を屈めた。
「あの人、照れてるんですよ。ガラにもないこと言って♪気にしないで」
照れてる??
あ・れ・で!?
「キリ!」と鴇田が入り口でキリさんを呼び、
「はいはい、行きますよ」とキリさんがのんびり答える。
鴇田は飄々とした態度でスーツのポケットに両手を突っ込んで目を細めていたが、あたしと視線が合うと
ぱっと顔を逸らした。
―――照れてる…ねぇ。
まぁそうかもしれんけど。(キモっ)