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== 琢磨Side==
今頃あのこざかしいクソガキは腹痛でトイレと仲良しなはず。
そのままあいつも便器に流されればいいのに。
下品な考えを浮かべながらも、口の端でふっと笑うと俺は唐津焼きの茶碗に口をつけた。
考えとはまるきり反対で上品な苦味が喉を通り、香りが鼻を抜ける。
その高級感のある茶の香りに混じって
阿片―――“オピウム”の香りが漂ってきて、俺は目を細めた。
朔羅が使っているチェリーブロッサムとは香りの質も重みも違う。
上品だけど、どこか危険で蠱惑的な―――
高級住宅街と称された都内の土地に、その古めかしい日本家屋があった。
その離れにある茶室で、釜から湯気が立ち上っている。
淡い桜色の生地には、肩に大きな芍薬を描いた小粋な和服姿の女―――
彩芽は
優雅な仕草で柄杓を手にし、釜から茶碗に湯を注ぎいれていた。
俺は両手で包んだ飲み干した濃茶の茶碗を畳の上に置くと、
「結構なお手前で」
と言い彩芽を見据えた。