◆ オピウム!? ◆
あたしたちが車に乗り込むとほぼ同時だった。
パトカーのサイレンの音が聞こえてきた。
騒然とした病院の中でも、その音は存在を誇示するようにはっきりと響いている。
「やけに早いな」
戒が片眉を吊り上げて、訝しそうに呟く。
「あれだけの大惨事だぜ?近くの署からも来たんだよ、きっと」
「それにしてもドクター…手回しがいいですね」
キョウスケもどこか腑に落ちない様子で運転席に乗り込んだ。
鴇田は無言で後部座席の扉を開け、大人しく乗り込んでいる。
「普通の病院じゃないからさ。そうゆうこともある程度想定されてるんじゃね?」
あたしが言うと、三人は押し黙った。
な、何なんだよ―――…あたし変なこと言ったか?
サイレンの音が近づいてきて、さっきの警報機ぐらい煩い音が辺りに響き渡った。
そのときだった。
車に乗り込もうとしていた戒が、ふっと目を開き後ろを振り返った。
鼻の辺りを押さえて、ひたすらに目を開いている。
「……あの香り……オピウム…が」
「あの香水がどうしたんだよ」
「匂わないか?」そう聞かれて、あたしはキョウスケに「何か匂う?」と聞いてみた。
キョウスケは首を横に振り、あたしも鼻をひくつかせたが、
火薬の臭いや排気ガスの臭いが複雑に混じっていて、その香りを嗅ぎ分けることができなかった。
「とにかく行きましょう」
急かすように言ってキョウスケがキーを捻った。
――――
「キョウスケっ!スピード出すぎ!!」
あたしが助手席で怒鳴り、
「ち、近い近い!車間距離開けろよ!」
後部座席では戒が身を乗り出してキョウスケに注意している。
鴇田にいたっては響輔の運転に酔ったのか、口元を押さえて顔を青くさせている。
あたしらが喚くほど、
キョウスケの運転は―――正直怖い…って言うか荒い!
涼しい顔をしてかなりスピードを出すし、前の車を煽ってんのか?ってぐらいぴったりと車間距離を詰める。
「すみません、ついバイクの感覚で」
それにしても、危ねぇし怖い!!
こいつ、顔に似合わずスピード狂!?
あたしは始終ドキドキさせられっぱなしで、狙撃よりもサツよりも
―――何よりもキョウスケの運転が怖ぇえ!!