冷蔵庫の中の調味料の位置が変わっている。 じゃがいもがまた流し台に転がっている。 そんなことはもうどうでもいい。 私は、今、生きている。 昨日までの私じゃない。 私は、息ができないくらいの胸のときめきを感じながら、じゃがいもをむいた。 次の約束もなく、 彼が結婚しているかどうかもまだ知らない。 あんな風に会えるのは、最初で最後かも知れない。 でも、バスに乗れば彼に会える。 窓際のあの席で… 田所さんは、優しく微笑んでいる。