カランコロン… 魔法の解ける音。 この音で始まり、この音で終わる。 茶色くて、磨かれた美しい扉を 田所さんが押してくれた。 「じゃ、また!」 田所さんは右に、 私は左に歩き出す。 振り向きたいけれど、振り向く勇気がない。 田所さんは振り向いていない気がした。 もし、振り向いていたら、私は今度こそその胸に飛び込んでしまう。 そして、もうその胸から離れたくないと思ってしまう。 だから、振り向かず、ただ早足であの家へ向かう。 そう、今いたのは夢の世界。 私の住む場所は、現実。 ここが現実。