帰りのバスにはもう、田所さんの姿はなかった。 神様からのちょっとしたプレゼント。 一瞬のときめき。 ホワイトデーの夜、私は田所さんの手作りのブラウニーを食べた。 夫からのお返しの愛は、今年ももらえなかった。 甘くて、しっとりしたブラウニーを食べながら、 傷ついた心を撫でるように時間を過ごす。 女である。 私は女。 夫から体を求められることがなくとも。 髪型を変えても、服を買っても、誰も褒めてはくれないけれど。 それでも、私は女であり続けたい。 そう思わせてくれた今日の出逢い。