私の入る隙間もないくらい、田所さんは雪子さんを愛している。 それが伝わって、寂しさよりも少しホッとした。 私は不倫なんてできる人間じゃない。 でも、夫と別れてまで田所さんを追いかけることもできるわけがない。 夢から覚めるには充分過ぎる現実を知った。 田所さんは、寂しい私を助けてくれるだけの人。 私は、それを受け止めながら、田所さんの涙を見つめていた。 「本当に心優しい奥さんだったんですね。」 田所さんは涙を拭い、少し微笑んだ。 私の好きな包み込むような笑い方。