香ちゃんの言葉はあたしの中でぐるぐる回っていた。


私が悠斗と別れたあの夜、


長谷川はやってきた。


『岬が泣いてるかと思って。』


私の涙を乾かして、


そして消えてしまった。


迷子になったあたしの心は、


迷路の出口で置いてきぼりにされたまま


【笑えてなかった】というのなら。


私の心は未だ迷路の出口で彼が戻ってくるのを


膝を抱えて待っていたのかもしれない。



何かが音を出して流れ始めた。


子どもの頃砂場で水路を作って水を流した事を思い出していた。


溜まってしまった場所にくぼみを作ると一気に水が流れ始める。


耳の内側がくすぐられるような懐かしい感触。