わきわきと骨手を揉み込む形の溝出。骨だけの顔に表情なんか作れないはずが、鼻の下が伸びきった変質者顔をしているように見えた。


「おら、こいや、きょにゅーよお!きょにゅうぅぅっ、遊んでやんぜ、ヒャッハーっ!」


マジで捕まる三秒前。ここまで盛大に己が邪さを出すとは、男としては尊敬すべきだが、人間としてはゴミ屑だ。


もっとも、溝出は妖怪。人間の常識にツバを吐く輩に教える説法もなく、あるとすれば――


「ぱらりらぱらり――ぎゃびっ」


廊下の角を曲がるなりの一打。


額の骨を打ち砕く、暴力は素手で。溝出という骨を殴った方も痛いだろう。しかしながら、当の人はさも当然と、壁に叩きつけた溝出を踏みつけダメージを顔にも出さない。