冬月君、何があったんだろう。


そう思えてしまうほど、渉が知る冷酷な冬月とはかけ離れた豹変ぶりだった。


冬月が兄を溺愛しているとは、噂探求者わたるんとして知ってはいたものの、ここまでとなれば、異常めいていた。


「冬月は甘えん坊やねぇ。手合わせはまた今度どすえ」


腕から体に絡み付いてくる冬月を鬱陶しいとも思わないのか、好きにさせた秋月は脊椎分割に抜いていた刀、童子切安綱(どうじきりやすつな)を納刀した。


双子揃って妖怪退治屋。源(みなもと)の姓を持つ者として、刀の扱いが上手い。斬るときもそうだが、納刀とてスムーズに。使い慣れた分だけ、冬月たちは数多の妖怪を切ってきたのか。