秋月の横暴に溝出可哀想と憐れむ渉をやんわりと流しながら、冬月は兄である秋月の腕に絡み付いた。


秋月とは初対面の渉でも、初対面と思わせないのは秋月が冬月の姿見だったからか。


どちらが模範にしても、真似たでは済まされない瓜二つが現れたとあっては、渉にデジャヴさえ覚えさせた。


狐面に灰色の着物。腰には刀と、冬月そのもの。どうやって見分けるかについてだが、姿ではなく、その所作で見抜くことになろう。


「兄さんに手ほどきされたいわぁ、痛くても我慢できますえ、僕は。兄さんには愛がありますさかい。愛が残るやなんて、心踊らん?兄さんの安綱(やすつな)と僕の蜘蛛切りが打ち合えるのもまた至高やわぁ。

はあ、兄さんに何されても、僕は嬉しいどす。兄さん、だーい好きやからなぁ、僕。兄さんに何かされたいわ。ねぇ、そやから、僕だけを見てほしいどす、兄さん。兄さん、僕にいっぱいしておくれやす。僕も兄さんだけを楽しませますさかいに、ねぇ、兄さん」