「ひ、たふ、まっ……だ、っ!」


恐怖で声が出ない、砂でも呑み込んだ声は誰にも届かず。


「わたるん、ミドリムシラーメン食いてぇ」


「そんなラーメンがあるんですか?」


「いや、あんだって。まあ、どっかの店限定らしいけど。食ってみてえから、わたるんが作れ」


「じゃあ、ザリガニ釣れるような川に連れてってください。材料(苔)取って、インスタントラーメンにぶっこみますから」


「お前、性格ほんと悪くなったな……」


もうお開き雰囲気な唯一の救いの主は去っていく。


呼び止めることも追うことさえできない。


実体化した悪夢はそこに、ただ一度だけにっこりと笑って。



「「たーんと、遊んでやるよ」」




刀を持った手首が、ぐいぃと動かされた。