「まだ……死んでないんどすか」
渉の死んでしまうとは、裏を返せば生きているということだ。
硬直したままの白骨体に最悪な展開を覚悟した冬月にしてみれば、安堵というより驚きが大きい。
「今も呪われている以上――命を喰われているなら、まだ溝出さんには“喰える命”が残っているということです。仮死状態みたいなものでしょうか。生きながらに、死に急いでいるのは変わりませんが、まだ何か打つ手が……」
あるとまで繋げなかったのは、渉にはその打つ手が分からなかったからだ。
呪われた者の救済など渉にはできない。祓い屋の分野にしてもこれほど強大と思わせる呪いは見ただけで逃げ出そう。
阿行は怪異。冬月は退治屋。この場にいるものでは、誰一人として溝出を救えず、ただ手をこまねいていることしかできなかった。


