そうとは知らない冬月は苛立ちをあからさまにうっかりと、手元が動いてしまいそうでも。
「ふゆっきー、やめてよー」
渉の背中でいそいそ声を出す阿行に脱力した。いつの間にか面を変えたらしく、(´;ω;`)と涙。
脱力から冷静になり、冬月が肩から力を抜いて刀を納めた。
鍔(つば)と鞘口が噛み合う。小銭でも落としたような音を鳴らしたあと、冬月は「堪忍な」と続けた。
「僕には理解できんって言ってもくれはったのに、わざわざ説明してくれて……、そこで僕が嘘だと疑うんは、酷く幼稚でしたわぁ」
「いいんですよ。疑うことさえ当たり前ですから。――それでも、このままにしておいたら、溝出さんは本当に死んでしまいます」


