ひとしきり笑った後、千鶴兄さんが「あー」と言いづらそうにもごもごした。
すぐに何かを察した陸兄さんがゆっくり言葉を並べる。
「そうだね…こういう状況だからこそ、楽しいことも必要なのかもしれない。でも、そろそろ話を戻そう」
「陸ちゃーーんナイス通訳大好き」
「……」
ごもっともだ。
愛の告白を適当にあしらった陸兄さんはソファに座り直した。
真っ先に椎名さんが口を開く。
「陸さん、さっきなんて言ってましたっけ? 似てるだとか何とか」
一瞥したのち陸兄さんはこくんと頷く。
「月子を襲ったのは多分、式神」
「式神…!?」
「うん、間違いない。しかも多分、あれは正当な順を踏まずにつくられた人工物…まがいものの妖だ」
陸兄さん以外の三人が全員、息を呑む。
なんだって? どういうことだ。なんでそんなもの─
絶句する寸前に、記憶の端でまだ新しいそれを思い起こした。
あぁ、いや。それは俺も知っている。聞いたことがある。
この世に存在し得る、式神を作る方法のうち最も最低で最悪な術式。
そしてそれを知るのは限られた名家のみ。
「野生動物を殺したあとに術をかけて、使役する……代々麻上家に伝わる禁術!」
