「もー…すぐそうやってバカにする。薫わたしのこと相当キライでしょ」
「嫌いだね」
「んぐっ…」
羨ましいくらい嘘つくこと知らないわこの子。
…でも。記憶がないことを抜きにしても、薫がどんな性格か、だんだんわかってきた。
「…あまのじゃく」
「は? なにそれ」
「薫にぴったりな言葉ですよーだ」
「どんな意味?」
「知らないっ。あとで辞書で調べたら?」
「は、ちょっとなに。気になるんだけど教えてよ!」
やだよーだ。
さあ、そろそろ焼くの交代しないと。秀くんと飛鳥にいつまでも焼かせるわけにはいかない。
…あれ? そういえば神崎くんは?
「神崎なら携帯もってどっか行ったぞー。電話じゃん?」
「あぁ、なるほど」
それなら仕方ないけど、急に姿が見えなくなるとびっくりしちゃうな。
「あっ」
立ち上がった拍子にカーディガンのポケットからひらりと何かが舞った。
なにかと思ったけど、紙のようだ。あぁ、さっきラミーさんに頂いた…
いかん、汚れてしまう。
「ちょ、薫拾って。今両手塞がっちゃってるから」
「なにしてんの…」
呆れながら薫がお札に手を伸ばした。
本当に、その一瞬だった。
バチン、とお札と薫の間に何かが走っていったのが見えた。
稲妻のような、なにかの光みたいな─
薫に触れられるのを拒むみたいにお札はひらりと動いて、ぶるぶる震えたかと思うと急に火がついて燃えて消えた。
─なに、今の?
飛鳥や秀くんにもそれは伝わっていたみたいで、驚いていた。
ごくりと唾を呑む。
ほぼ灰になってしまったけど、かろうじて見える文言と記号の形。
はっきりと見覚えがある。
これは特定のものに触れられたときにだけ反応を示す、『具現』や『炙り出し』、『見破り』と呼ばれる陰陽術だ。
主に「妖の匂い」に反応するように術をかけるのが一般的だ。
この札に薫が反応するなんて、ばかなこと。
いやな汗が背中を伝い落ちた。
─そしてこんな術をかける人は、私か、この場にはもうひとりしかいない。
「…そん、な」
