はらり、ひとひら。



・ ・ ・


「…あれ。あの子。完ッ全に妬いてるわよね」

「ほんとはいとこじゃないんじゃねえの…?」

「ま…まさか。そんなありえないわよ。杏子が、あたしたちの知らないうちに男つくるなんて…」

「いやいや、意外とそのまさかだったり? 奥手すぎる神崎を見限ったのかも─」


ずんずん前に進む薫について行けない。

ていうかなんか後ろで失礼な噂されてる気がする…!!?


「っちょ、っと薫!! ストップストップ! ステイ!!!」


胸にもやもやは盛大に残ったままだけど、それより今は。


「腕もげる!! 待ってって─ぶぉあっ」


猛スピードを緩めずに歩いていた薫、急停止。
引きずられてた私、止まり切れない。ぶつかる。

「うううう鼻折れた絶対折れた」

「折れてないから」

「なに怒ってんの…」


鼻血出てないかなと心配しながら尋ねると、薫は露骨に嫌そうな顔をした。
と思ったら、さっきまで神崎くんに引っ張られていた左腕をすんすん…犬よろしく肌を嗅ぎ始めたではないか。


「ちょっ…とおおお!? セクハラぁぁあおまわりさん!!」

「…やっぱ気に喰わない、あいつの匂い。もうあいつと話すのやめたら」

いやなくらい冷たい口ぶりだった。


「あいつって…」

「あの胡散臭いやさ男だよ。なんか怪しい。他の二人はともかく、あいつは信用できない」


そんなのわかんないじゃん。だってまだ会って少ししか時間経ってないのに。


「そんな真っ向から否定するのは…」

「……じゃああいつにさっき、何言われたの」

「何も言われてない。話があるって言われただけ」


ここで迷ったらだめだと思った。
間髪入れずに答えたが薫の疑念まみれの顔つきは変わらない。

…心が痛い。


「とにかく俺は気に喰わないから。信用しないし」

「っ」


いよいよカチンときた。でもここで言い返して、何か状況が変わるだろうか?

私とは真反対な迷いのない、凪いだ声が耳を通り抜けた。


「いいよ。別にそれでも」