ドアノブにかけようと前に出した手をぱっと掴まれた。
わ、今度はなんだ。
「言ったら、杏子は怒るかもしれないし、ただの勘だけど。─あの三人の中に気に入らない匂いの奴がいる…から、気をつけて」
気に入らない匂い? 気をつける?
─どういうこと?
「ちょっと薫…うおうっ開けた!」
今まであれだけ渋ってたのに!? そんな自分の言いたいことだけ言ったらあっさり。こっちの質問にも答えてよ!
…目が回る。暴君だ。
「あ、やっと来た杏子」
「あんまり遅いから、なんか揉めてんのかなって心配したぞー」
すっかり勝手知ったるという様子でくつろぐ秀くんは、薫を見た途端目をぱちくりさせた。
「うお、杏ちゃんのいとこさん? 想像よりでかいからビビった」
「……ハジメマシテ」
なんだろう。私の方が緊張する。滝のような冷や汗が止まらない。
一応は教えた挨拶をなんとなくクリアしてくれた。
飛鳥や神崎くんにも同じ口調で頭を下げるとダイニングの方へツカツカ歩いて行き、ご飯のとき座る定位置に薫はどっかり腰を下ろした。
…遠い!!
しかもなんかめちゃめちゃ警戒してるよホラ。彼氏を初めて家に連れてきたときの父親の反応かよ。
睨むのやめてと目で訴えても、伝わらないようで。
う……これ、やっぱり会わせない方がよかった?
「あ、杏子…あの子大丈夫? なんか…元ヤンっぽい…」
案の定すでに引いてる人、若干一名。
はっきりものを言うタイプの飛鳥と、あまのじゃく気味な薫は確実に反りが合わなそうだ。
なるべく二人きりにさせないように努めよう。
「おーい、なんでそっち行っちゃうんだよ! 名前なんてーの? 同級生?」
どうしようと思考を巡らせていると、救世主は存外すぐに現れた。
コミュニケーション能力ばつぐんの秀くんは、薫の睨みにも怯まずお茶をなみなみ注いだコップを片手に薫に近づいて、自然な笑顔をぱっと咲かせる。
