4人の中でも行動派の私と秀くんは帰り道で唐突にバーベキュー&花火の計画を立案し、本当に最後の思い出作りになるかもしれないということで、あれよあれよという間に日時が決定した。
飛鳥は予備校、神崎くんはお家のことで忙しいことを危惧したけどなんとか大丈夫だった。
「…っていうわけでね」
「わかってる。部外者はどっか行ってろ、って話でしょ」
「だああ! 違うってば! 薫もせっかくだから一緒に混ざろう?」
「っ、いいよ俺は…」
あからさまに拒否する薫には困ってしまう。
照れ臭いのか人見知りなのか…
「みんな優しいし、いい人だよ?」
「そんなの知らない。他人だし」
「うぐっ…そんなこと言わないで…あ! ご飯はみんな一緒に食べる! って約束!」
「! そ、れは」
奇跡的に思い出した椎名家の鉄の掟を振りかざすと、薫はなんともまあわかりやすく顔色を変える。
うぷぷ、素直なやつめ。
もうちょっとだな、これは。
「薫と一緒にバーベキューしたかったのになあ」
「っ」
「花火も」
「う」
「それなのに薫が、私と一緒がイヤなら無理にとは言えないよね…」
「~~~っ、わかった! やればいいんでしょやれば!」
ニヤリ。
かかった。
「じゃ、問題ないね。大丈夫、海斗も混ざるって言ってたし、何より絶対楽しいから!」
「…うまく丸め込まれてる気がする…」
気のせいさ。
─とはいえ、何もかもがとんとん拍子で決まったというわけじゃない。
バーベキューと花火で一番困ったのはやっぱり場所。
飛鳥の家は妹さんたちが小さくて忙しい親御さんに迷惑になるから駄目で、秀くんの家は庭が狭いらしくスペース不足、神崎くんの家は広さは申し分ないが、あの美しい庭園をバーベキューの匂いで染め上げるわけにはいかない。
つまり、家しかない。
断られたら全部計画がパァになってしまうと恐れたが、お母さんは意外にも快諾してくれた。
「これから先、こうやってみんなで集まれること自体難しくなると思うし。いいんじゃない?」
いつもツノを生やしてフライパンを振り回すお母さんが、今回ばかりは女神様に見えた。余計なことは言わずにお礼を言って、とりあえず嬉しさを糧に庭に生えた雑草や小石を除けてきれいにした。海斗には「することが老人」と馬鹿にされたけど。
昨日の今日なので若干筋肉痛だけど、こういう準備含めてイベントは楽しいよね。
ちなみにバーベキュー道具は飛鳥が家から持ってきてくれるそうだ。
「あーっ、楽しみだなあっ」
「そういえば食糧はどうするの?」
「夕方みんなで家に集まってから買いに行くの! 花火も」
「ふーん…」
あ。興味なさそうだけど薫、嬉しさが顔に滲んでる。
微笑ましい様子に自然と口角が上がってしまう。
可愛くてしょうがない。自然に手が伸びて、暗い色の髪の毛を撫でまわした。
当然抗議されたが、本気で嫌がってるわけじゃないと汲んで続ける。
会ったばかりのときは触っただけで激怒したのに…ペットが懐いてくれたみたいで嬉しいな。
「杏子今、失礼なこと考えたでしょ」
「…考えてないよ」
「は。バレバレだから」
へへっと誤魔化すように笑うと鼻をムギュッと摘ままれる。それやめて苦しい…!
「ぷ、変な顔」
破顔した薫がじゃれ合うように身を寄せてきて、苦しいのと暑いのと恥ずかしいのでふざけながら逃げると不満だったのかマウントを取られて、客観的に見てまずい体勢ができあがる。
う、馬乗り…!
「ちょっと薫これは」
「降参した?」
…近い!! 息がむき出しの首筋にかかる。
うそだ、今までこんなに意識したことなかったのに。神崎くんに雰囲気が似てるって、ちょっと思うだけでこんなに─
「した! したから退こう!」
「…何赤くなってんの?」
わけわからんくらい意識してたのは私だけのようで、薫にとってはただのじゃれ合いにすぎなかったらしい。…犬か!
薫にはいろいろと教育が必要なようです…
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