はらり、ひとひら。



「薫、起きた?」

部屋の扉を開けるのと薫が目を開けたのは同時だった。


「うん。寝ちゃってた」

よほどぐっすり寝ていたのか、若干目がとろんとしている。寝不足だったのかな。


「もしかして、夜、眠れてない?」


昼間こそ私の部屋にいることが多いみたいだけど、年の変わらない男の子と同じ部屋で眠るわけにはいかないので薫は夜だけ別の空き部屋を使っている。
あそこは冷房もないし、風通しもあまりよくないから熟睡できていないんだろうか?


「いや…あーでも。海斗とゲームするのが楽しくて」

「…なるほどね」

心配して損した。ほんっとにこの二人は気が合うようだ。


「…海斗に、この前『兄ちゃんが出来たみたいで嬉しい』って言われた」

「…そっか。我が家には男の子いないから、楽しくてしょうがないんだね」


それにしてもあの海斗が、そんなこと言うなんて。素直でかわいいところもあるじゃないか。


「海斗と遊んでくれてありがたいけど、ゲームのしすぎはよくないからね! 目は定期的に休めて」

「わかってる。花代と同じこと言わないでよ」

「そりゃー親子ですから」

言動だって似ますとも。


「…いい家族なんだな」


ぽつりと漏らした薫の声が優しすぎて困った。こんな時、なんて言葉をかけるのが適切なのかわからないや。


「薫は、どんな家で育って、どんなお父さんとお母さんがいたんだろうね?」


夕日の色が窓から濃く差し込んで、薫をオレンジに縁どった。ヒグラシの鳴き声が遠くに聞こえる。


「わからない。でも、この家はすごく温かい。ご飯も、風呂も、全部あって…みんないつも笑ってて、にぎやかで」

「あははっ。みんな元気だけが取り柄だからね」


寂しげな薫の隣に腰を下ろした。
…薫は、不思議な男の子だ。
綺麗で繊細で、不安定。一見冷めたように見えるけど内には熱い激情を秘めている─あ、そうか。


似ているんだ。
神崎くんと。


─どうして今まで気が付かなかったんだろう。


だから放っておけないんだ。だから、安心するんだ。


「薫、私のよく知ってる男の子にそっくり」

「? 誰それ」

「ふふ。今度会ったらわかるよ。すごく頭のいい人だから、薫のこと何か知ってるかもしれない」

「…ふうん」


あれ? なんだか不満そうだ。


「薫、なんか怒ってる?」

「別に怒ってない」

「いや怒って」

「ない!」


うわわ怒ってるじゃん! なんで!?


「杏子のその顔ムカつく」

「ひどくない!??」


顔disはさすがの私も傷つきます。