はらり、ひとひら。



「『九月三日。晴れ。ひときわ今夜は月が美しい。明日も晴れるだろう』」

「『九月七日…晴れ。通り雨のあと、虹が出た。台風がこの町に近づいている』」

「『九月十日、嵐。大荒れで休校の知らせがきたが、することがなく一日中本を読んでいた』 


この辺から日付が飛び飛びだ。書き忘れたのかもしれない。おばあちゃん、意外とずぼらだったのかな。

親近感がちょっと湧いてくすっと笑いが漏れた。


「『九月十一日、晴れ。台風は過ぎたが、その影響で迷い込んだ猫に餌をやった。ひどく弱っていた。救ってやりたかったが、どうしようもない。変わらない未来だと感じた。きっと明日にでも死んでしまうだろう』」

「『九月十二日、晴れ。やはり死んでしまった。猫を土に埋めた』」
 

こんなことも、あったんだ…


「『九月二十九日、晴れ。今日も妖に追い回されて大変な思いをした。いつか生まれる孫にも、同じ思いをさせてしまうのは心苦しい』」


孫思いのいいおばあさんじゃないか。よかった、おばあちゃんすごく優しい人だ。ありがとう、大変だけど師匠が守ってくれるから大丈夫だよ。

そう心の中で呟いたところで、はた、と気が付いた。


何か違和感がある。
いつもなら見落とすくらいの小さな違和感。だけどこの時の私は珍しく気づいてしまった。


同じ文章を繰り返し読み返してようやく合点がいった。



─いつか生まれる孫にも、同じ思いをさせてしまう。


「…え?」


言いきっている。
私が生まれることと、同じく修羅の血を引いていることをまるでわかってるような口ぶりだ。

これではまるで予言だ。


少し前のページまで遡って見直す。

『明日も晴れるだろう』『台風が近づいている』『変わらない未来だと感じた』『きっと明日には死んでしまうだろう』『やはり死んでしまった』


鳥肌が止まらない。



「おばあちゃん…?」


こんなのまるで、未来予知だ。



ただの偶然だろうか? 私の考えすぎだろうか。言葉の綾だろうか。…そう思い込むのには無理があった。


心臓がバクバクうるさい。恐ろしくなった私は日記を元の位置に戻した。


次いで、別の本を手に取ろうとしたが、閉め切った埃の匂いにやられたせいか頭痛がしてきたので蔵を出ることにした。

なんだろう。

ここにいてはいけない気がする。


ちりん。とどこかで、鈴が音を立てた気がしたが早く部屋に戻りたい気持ちが足を急がせ、深くは気にしなかった。