「なんてもの保管してるの…!」
そりゃあ、歴史あるものを大切にするのは良いことだと思うけど!
「注意書きくらい欲しいもんだなあ。心の準備がないとあんなの見れないよ」
好き勝手文句をぶつくさ言いながら上の段の本を手に取った。
「あれ? これだけ何か、新しい?」
新品とは言えないが、そこまで大昔のものには見えない。
不思議に思ってページを捲った。
「『…七月、二十八日……雨。今日も、また雨だった。土砂崩れが心配だ』」
「『七月二十九日…曇り。日々は退屈だが、平和で何よりだと感じる』」
「『七月…三十日。学友に、お茶に誘われたが断った。気を遣わせてしまうのが、堪らなく申し訳ないからだ。少しばかり残念に思うのは、なぜだろう』」
これって。
「誰かの日記だ」
…誰の?
うちの蔵にある以上、椎名家の御先祖さんの誰かのものなんだろうけど。
…きれいな字。繊細で、柔らかい。表紙の桜色の紙も相まって、女の人のものに見える。
この人がどんな生涯を送ったのか気になって、読み進めようと更に紙を捲ろうとした時。
はらりと何かが落ちた。
「わっ」
何かの拍子に破いてしまった!? と焦りに駆られたが拾い上げて見ると、違った。
「写真だ……え?!」
絶句した。開いた口が塞がらないというのは、このことだろうか。
古い写真。真ん中に映る、セーラー服を着た女の子。
驚くほど、自分に似ていた。
「わたし…?」
伏せがちな瞳に冷たい感じを受けるけど、この顔つき。─似ている。お母さん、ではない。お母さんの学校はブレザーだと聞いていたし。
だとすればこれは…
「おばあちゃん…?」
写真を裏返して目についた文字に確信した。
あぁ、と。
端の方に日記と同じ字で日付と、『高校卒業 桜子』と書いてあった。
この日記は、おばあちゃんのものだ。
言葉にしがたい感情が胸を満たして、肺が苦しくなった。
─おばあちゃん。
私と同じ修羅の血を引いていて、強い力を持って師匠と知った仲。
お母さんを生んですぐに他界して…おじいちゃん曰く「すごく美人で良い女」。ベタ惚れしたおじいちゃんが猛アタックしても全然落ちなくて、落とすのに苦労したといつだか笑っていたっけ。
それくらいしか、私は知らない。
─だけどここには、おばあちゃんの生きた証が遺されている。
知りたい。
おばあちゃんがどんな一生を送ったのか。
会ったこともない私の大切な家族。桜子さんは、どんな人で、どんな風に笑うんだろう。
想いを馳せながら、ゆっくり、ページを開く。
