はらり、ひとひら。



思案していると師匠がぴくりと動いた。大きな白狐は術が解けたように小さく、いつもの肩乗りサイズに縮んでいく。

「師匠っ」

大丈夫!? と近寄るとうっすら師匠は目を開けた。よかった、無事だ。

「大丈夫さ。まだ寝てるだけ─おっと」

「ちょっとまだ動いちゃ…」

「龍神…余計な真似を」

見ているこっちがぞくりとしてしまうような眼光。空気が震えている。ピリピリと肌を刺して、痛みを感じてしまうくらい。

師匠から見て取れたのは明確な怒りと敵意。
青い2つの眼は、青緑色の髪をした龍神をただ睨めつけた。


異常なまでの気迫に師匠を宥めることも忘れてしまいそうになる。


「怒った? あはは、ごめーんって」

「貴様、何故ここにいる」

「言ったろう、ただのお散歩。助けたのはまあ、」

「何故邪魔立てした。わかるだろう。これは」

頬が濡れた。なんだこれ、と思った数秒後にわかる。水だ。
蛟が放った水の玉は師匠を直撃して師匠を閉じ込めた。

「蛟!? やめて、師匠が死んじゃう!!」

「…白ぎつね。"それ"を言ってはいけないよ。今日の君は『おいた』がすぎる」

蛟はかざしていた手をぐっと握り込めた後、力を緩めると水の玉は弾け消え、ぐたりとした師匠だけが地面に落ちた。息を返したように師匠は激しく咳き込む。



濡れた白い毛を撫でながら思った。

なんて、恐ろしいんだろう。与えもするが、平気で奪おうともする。そこには何の躊躇いも迷いもないということ。


これが、神と妖の違い。明確な差。