「気に入らない。お前のその眼」
「わ、悪かったね!」
生まれもったパーツなんだからしょうがないでしょ、と言い返すと彼はフンと鼻を鳴らして私の顔から目を背けた。よっしゃ、勝った。…のか?
「はあ。人臭いし、何が起きてるのかワケわかんないし、最悪だ」
忌々しそうに呟くと少年は自分の肩に触れ、ぐっと爪を立てる。
そんなに爪を立てたらいけない、と言いかけてまた噛み付かれて終わりだろうと思いやめた。
…人臭いって、だってあなた、人だろうに。
「ねえ、どうして妖に追いかけられていたの?」
「…こっちが聞きたいよ。しつこいし足速いし、煩わしいったらない」
「妖…えっと、さっきのお化けのことは見えてるんだよね?」
おずおず訊ねれば少年は視線も寄越さず頷いた。
「お前は…あれが何か知ってるの?」
「まあ、一応…?」
「そ。…もういい、癒えた」
「へ」
ザバッと突如として水から上がった少年にまた悲鳴をあげかけて飲み込む。恐ろしいほど視界が肌色だ…!! ていうか早いわ! ワンクッション置いてから立ち上がって!!
私のそんな心の声なんて知らぬ存ぜぬなご様子で彼はガサゴソ着替えを始めた。んだと、思う。衣擦れの音から察するに。
「あの小僧、妙だな」
「え」
今まで押し黙っていた師匠はやけに静かな声で呟いたのでぴりっとした緊張感が走る。
「わからないか? 類稀な回復力、嗅ぎ覚えのある匂い…独特の血の味、妖を惹きつける質とこれだけ条件が揃えば」
誰かとそっくり同じとは思わんか。
─息を呑む。それって、つまり。
「私と、同じ」
修羅の血?
