師匠とああでもないこうでもないと言い合いながら歩いていると、ぴちゃっと水の音がした。
少し入り組んだ場所に大きな水たまりが見える。
…池?
土に転々と続いていた血はここで途切れている。
ここにいるのかな、と覗き込むと白い体が水に浸かっている。澄んだ池の水には赤い血が生々しく浮き、傷だらけの体が岩に凭れるようにしているのが見える。かなり露骨に。
つまり裸だ。
背中しか見えないけど、同年代くらいの子の裸に免疫もない私はかなしいかな動揺して「ほあッ」と小さく声をあげてしまった。
目敏く少年は肩を揺らして振り向いた。
軽蔑の色を含んだ目で私を睨む。
「…何」
「な、にじゃなくて。酷い怪我してたから放っておけなくて」
情けないけど、裸を見ちゃいけない気がして背中を向けて喋る。
「馬鹿じゃないの。くだらない」
本当に、吐き捨てるような言い方だった。聞いているこっちまですっきりしてしまうような。ぐっと堪えて呼びかける。
「ねえ、水から上がって。言霊で傷塞いだことはないし上手くやれるかわからないけど…」
「…はあ? 何言ってるのお前。意味わかんないし…いいから構うなったら」
次いで、早くどっか行ってと苛立ちを露骨に醸し出し少年は吐き捨てた。
…いかんいかん。こらえろ。これは私がお節介でやってるんだから、怒る資格はない。
「お前だってどうせ、人の形をした妖か何かだろ」
「ち─違うよ!」
「じゃあ祓い屋か。式神なんて連れてるし、どうせロクな奴じゃないんだろ」
「っ」
いよいよ我慢できなくて振り返る。
そんな言い草あんまりだ、と抗議の声をあげる前にまた睨まれて気迫に負けて口を閉ざしてしまう。
