はらり、ひとひら。



跡形もなく消えた妖に安堵していると一瞬の隙を突かれ、少年は忽然と消えていた。


「…嘘!? いなくなっちゃった」


あんなひどい怪我していたのに。


「人の味がする。あの小僧、妖に食われたようだな」


ぺろりと自身の口元を舐めながら師匠は鼻を鳴らす。…間接的な人食い宣言されてしまった。


脳裏に浮かぶ男の子の顔。やけに焼き付いて離れない金色の吊り上った目。


「…駄目だ。ほっとけない、探して助けよう師匠」

「かくも儚き人の命。運命に翻弄され命を落とす。それも人の性というものだ」

「師匠っ」


見捨てるって言うの、と語気を強めて青い目を睨むと観念したように目を伏せた。


「助けてお前の利になるか」

「ならないよ。だけど見捨てた後に、『やっぱりあの時助けておけば』って後悔したくないもん」

「…まったく」


ぬるい奴、と師匠は言うけど言葉とは裏腹に9つの尻尾が優しく私の背中を擽った。


「…いつもごめんね。振り回して」

「今更謝られても遅い」

「あはは」


ありがとう、と白い毛をあますことなく撫でた。


・ ・ ・


転々と続く血を辿りつつ師匠の鼻を駆使しつつ、男の子を追う。

どうやら師匠は少しずつ嗅覚を取り戻してきたようで、あれだけ充満していた瘴気もかなり散ったらしい。


「じゃあ瘴気の正体はあの妖だったの?」

「あの妖とさっきの小僧と場所、全てが組み合わさって生まれたもんだな」


偶然の産物? 

師匠が妖食べたから瘴気が消えたのかと思ったが、どうやらそれは見当違いだったようで。


「いや。お前があの道に足を踏み入れた途端に徐々に薄れた。お前は歩く浄化装置だな」

「え」

「お前の特性のようなものだ。無意識のうちに瘴気を吸って無害化して外に排出」


いうなれば空気清浄器みたいなものだと師匠は得意げに説明してくれた。


なんだかすごいことをしているように思えるけど、私としては全くそんな意識はないわけで。

無意識下でそんな大変な活動しているのか私。我ながらすごい力。


というかその例えやめてほしいな。