はらり、ひとひら。



「っ、」


しだいにズキリズキリと、等間隔でこめかみを打つような頭痛がしてくる。

聞こえないはずの声すら耳に流れてくるような。妖か人かわからない異質な声。明瞭に聞き取れないが不快なざわめきに混じるようにして少女の笑い声が聞こえる気がする。


ひどく気分が悪くなって冷たいガラスに頭をつけると、車窓を流れる景色に紛れて、恐ろしい─この世のものとは思えない"穢れ"を見た気がした。


・ ・ ・


side-杏子


教室内は賑わっていた。今年のお祭りは浴衣を着て、海に友達と、家族でバーベキューを…聞いているだけでウハウハな気分になってしまうような、そんな言葉で。

高校生ラストの夏休み目前テンションになんとなく乗っかれない私の手にあるのは、《補習のお知らせ》と綺麗に印刷された無慈悲なプリント。無駄に可愛いフォントで印刷されているのがかえって心に刺さる。脇には『がんばろうね!』と台詞つきでクマのキャラクターがえいえいおー!をしている。うわぁなんか無性にイラッとくる。

ちなみに登校日は割とある。しにたい。



「うえ~もう嫌だよぉ」

プリントを半泣きでファイルに挟んで、苦笑いの飛鳥とグッジョブポーズの秀くんと教室を出る。秀くん笑顔なのに目死んでる。せ、生気がない。


「二人とも良い機会になるんじゃない? 先生占領してがんばんなって」

「うう~~はい…」

「くっそー! こうなったら夏休み明け、俺も飛鳥と同じ学校に行けるくらいにまで偏差値あげてやる」


意気込む秀くんに飛鳥は「あんたこないだの模試でE判定食らってたでしょ」と毒を吐いた。


「なんで勉強しないといけないんだ…? 人間は学ぶ生き物…学ぶっていったい」

「そんな哲学的な」

このままじゃ秀くんが悟りを開いてしまいそうだ。人間を辞めてしまう。

いっそ仏にでもなろうか、と並んで私も真顔になっていると飛鳥は頬を掻いた。そして、言いづらそうに口を開く。


「あー…あたしもこの夏、頑張るから。受験とか就活落ち着いたら…どっか、その。旅行でも行こうよ」

旅行というワードに露骨に秀くんは反応して、ぱっと顔色を変える。若干顔を赤く染め。


「お、おまえなあ…! 二人きりで旅行なんてまずいだろ!」

「…はあ!?? 馬鹿!? 杏子と神崎と四人で、って意味よ!」

つられて飛鳥もボンッ! と赤面して「何考えてんのよ変態!」と啖呵を切る。