はらり、ひとひら。



そうか、父は信じていなかったのか。

元々父はそういうものに対しては冷めた部分があるし、無理もない。

けれど俺は確信してしまった。あれは本物だ。
椎名桜子─椎名さんの祖母にあたる女性は、本気で未来を予知していた。

確かな、恐ろしいほど的確な未来を。これまでその未来が覆ったことは、残念ながらないのだ。

「予言では禍が目覚めます。早いうちに手を打ったほうがいい」

「…信じがたいが、時期なんかも記してあるのか?」

「おおよそですが、冬までには間違いなく」

緋嘉さんはため息を吐いて顔を覆った。
信じられない、彼はうわ言のように繰り返した。


「あれほどの力を持つ妖では、我々が束になってかかっても足止めにもならんだろう。…どう考える?」

「はい。恐らくこのままでは、神崎の総力を以ってもあれは倒せません。…かの姫君ですら封じるのでやっとだったのですから」

遠い昔、一人で禍と戦った誇り高き姫神。その戦いは七日七晩にも及び、憔悴し力尽きかけた姫神は最後の力を振り絞り大岩に弱った禍を封じた。

代々この町に伝わる、知る人ぞ知る歴史の裏側。

神ですら倒せない化物を人である俺たちが倒すなど到底成せるわけがないのだ。


倒すなど考えてはいけない。

俺たちに出来ることはせいぜい、あの場所へもう一度封じ、安寧を祈るだけ。


「宝生家に協力を仰いであります。早いうち封印を上からかけます。幾重にも」

「ふむ…」