はらり、ひとひら。



私たち以外の精気を吸ったのか、私が最後に見た倍は体が大きくなっている。


丸い巨体の表面にぎょろぎょろとした目が不規則的にところどころ浮かび、身体は今も変形を続けている。

まるでどんな姿になろうか模索したあまり、自分を見失ってしまったみたいな。


「…っ」

気味が悪い。骨が砕けるみたいな音を立てて体を作り変えていさまに、ひどく嫌悪感を覚える。


『食わセろ、弱いオマエら人間ニ餌やっタ、なノにお前ラ、逃がした!!』

怒号。衝撃波が再び飛来する!


「餌…あんなものが餌になると、本気で思ったのか?」


黒い妖の背後に回った神崎くんは、いつの間にかその妖の周りをぐるりと陣で囲んでいた。

いつの間に、という言葉しかでない。


「夢を食う妖か。獏(ばく)という妖の類かと思ったが…お前には品位の欠片も感じない」

「獏じゃない。もっと小汚くて穢れを撒く禍(わざわい)だ」


薄く笑った神崎くんに師匠も同意して頷いた。


えっ、ちょっとこれ私の出番は。

さっきの言い争いが嘘みたいに二人、ごく自然に連携プレーしちゃってるんですけど。



『何もクれない、夢しかなイ、あゲられるイイもの、夢しカない』


『ダカラ代わりにオマエらの、怒り、悲しミ、感情スベテほしい─』

部屋に反響する、寂しげな声。

『ココロ、羨まシい─』