神崎くんだ。振りほどけないくらい強く手を掴まれている。
「どこの、何を祀る、なんて名前の神か教えて」
「しつこいガキだな。霊界の主(ぬし)は死んでいない。神殺しなぞ恐ろしいことができるか」
あんまり話についていけていないけど、多分、師匠はこれしか私たちを助ける道がなくて、それがふつう良いとされないものでも私たちの命を優先して選んで来てくれた。
私たちのことを思って、危険をはたらいてまでしてくれた。
神崎くん。だからこうやって責めるのはまちがってるよ。
けど師匠も師匠だ、神様の名前くらい教えてあげたっていいじゃない。
どっちの肩を持てばいいのかわからなくて、私はおろおろとすることしかできない。
今にもお互い斬りかかりそうな権幕だ。静かな怒り同士がぶつかり合っている様子はただの言い争いの喧嘩とはわけがちがった。
これ以上言い争ったら、後戻りできない亀裂が走ってしまいそう─
それは駄目。
「っ」
ぎゅっと思い切り彼の手を握る。わずかに揺れるとび色の瞳と視線がかち合う。
「…お願い。師匠のこと信じてあげて」
「………椎名さん」
「師匠も! 大人げなく怒ったりしないの」
「はあ!? なぜ私まで!」
