「神? 霊界を介して境界を越えて来た、ってこと?」
今まで黙っていた神崎くんが口を開く。一斉に視線が彼に注がれた。
霊界? 境界?
「そうだよ。霊界に介入できるのは神のみだ」
「そんなこと許してくれる神がいたの? 本当に?」
「本当さ」
なんだろう。…雲行き怪しい? 珍しい、神崎くんひどく厳しい顔だ。
「私だって知らない神様だったよ。案内したのはこの狐さ」
「…その神の名は?」
何かを探るような険しい視線が師匠を射る。明らかに、彼の目には不信感とかすかな敵意が見て取れた。
無事に帰って来れただけで嬉しいことじゃないか。
なのにこんなことで争うなんて、おかしいよ。
本心ではそう言いたかったものの、生憎口を挟める状況ではない。
師匠はため息まじりにこぼす。
「私の勝手だ。お前の知る道理はない」
「神を侮辱するような真似を働くなんて、どれだけ危険か君はわかって」
「やかましい小僧だな。まだわからないか? 方法はそれしかなかったと言っている」
噛み付かん勢いで師匠は神崎くんを睨む。あまりの気迫に圧倒されて肩が竦んだ。
「下がれ。まだやり残したことがある。…ここに出ないということは杏子の家だ」
帰るぞ、と手を引かれ立ち上がろうとした手をとったのは、ちがう掌。
