「…一線越えたか?」
「いっ─!? こっ越えてない!!」
なんてこと言うんですかこの人は! 人じゃないけど!
きーきー吠えるとやかましいと師匠に怒られた。私悪くないのに…
「…っ」
「あ。神崎くん起きた?」
ようやく、といった感じで体を起こす彼。今だ意識が覚醒しないのか、薄目だ。
…薄目なのにこんなカッコいい人初めて見た。
自分が覆いかぶさるみたいな体勢でいることに気づいた神崎くんは、目を丸くして私の上から飛び退いた。寝起きなのに驚きの素早さである。
「ごめ、…何かした? 俺」
口元を押さえて赤くなられるとこっちまで被害が及ぶと言いますか。
ロボットみたいに首を振った。何も起きてませんよ。大丈夫ですよ。
「青いねえ」
灯雅がやれやれと笑う。
「とにかくお姉さんも真澄義兄さんも、無事でよかった…」
「心配かけたみたいでごめんね」
涙目で安堵の息を漏らす月子ちゃんに頭を下げる。
にわかに信じがたいけど、自分の身に起こったことは少しずつ思い出してきた。バラけた記憶のピースがはまっていく。
