はらり、ひとひら。



謝るお父さんにも首を振った。

ちがう。お父さんは悪くない。誰も悪くない。死は不可抗力だから。


それでも─

「生きて、て。ほしかったの」


白い監獄のような病室で横たわる父の身体からはいろんなチューブが出入りしていて

命を数える電子音はゼロに向かってカウントしているようで

何もかもが厭だった


『おとうさん、しんじゃうの?』


そのときわずかに、お父さんの手は、少しだけ動いて。


ここにいるから、と私に伝える様に。





…ちがう。今更だ、お父さんはもういない。


「っごめん。困るよね…なんでもない。忘れて」


完全に動きの止まったコーヒーカップから逃げるよう降りて、次は何に乗る?と訊ねた。


でもおかしい。身動きがとれない。



「杏子。お父さんはここにいるよ」


抱きしめられていた。不思議と恥ずかしさもない、ただ安堵するぬくもりがそこにあった。


「ここにいるから。ねえ、いるだろう。温かいだろう」


確かなぬくもり。

涙がこぼれた。