バラバラに崩れた躰。灰になり風に流れて消えていくその光景は不思議だった。目の前でこと切れる化け物はあまりに呆気なかった。
自分の掌を見て、俺は多分、幼いながらに達観したのだ。「こんなものなのか」と。
「真澄さん。何をしているの?」
「虫ですははうえ、みてください」
まだ健康だった母はよく構ってくれた。嬉しくて地面を動く蟻を手で摘まみあげて見せると、軽く力を押し込めるだけでぺしゃんこになった。
「うごかなく…なってしまいました」
黒いよくわからない粒になった蟻を見て母は悲しそうに眉を下げた。
「小さいからといって、いたずらに弄んでは駄目ですよ。命は尊きもの。大小善悪関係なく、命の重さは平等です。この世に不要な命など、ひとつもありはしないのですから」
母は綺麗に笑んだけれど、じゃあなぜ妖を斬るのはいいのだろう。妖の命はどうなる? 斬られたものに待つさだめは?
「あやかしをきるのは、悪なのですか?」
俺の質問に母は一瞬戸惑う素振りを見せたけど、すぐに顔を正して色白の手で俺の頭を撫でたのだ。
「はい」
