「今はかなりわかりやすくなったね、あたしの見る目がいいからかもしれないけど。ほんとに、前よりずっと人間らしくなったよ」
…そうなのか。俺は、人間らしくなったんだ。いや、元から人間なんだけど。
「夜も長いんだ。気分が乗ったなら昔話しておくれ」
「え…そんな、面白いものじゃないよ」
「過去があるから今の主があるんだろ。どんな話でも構わない」
彼女に押し負けて、俺は記憶を辿って言葉を吐きだしていった。
・ ・ ・
今から18年前の6月の末、俺は生まれた。厳格な父と心優しい母の間に生まれた俺は、母の名前の一文字をとり"真澄"という名を貰った。名前の由来は澄んだ心を持ち、潔く、質実剛健であれ─だったか。
「可愛らしい若様ですこと」
本家で生まれた待望の第一子の俺はとりわけ大事に育てられた。大事な跡取りを死なすわけにはいかないからだ。幼少期はただひたすら箱に入れられ、守られる側であればよかった。
だが成長するにつれ、自衛を覚えさせられる。
父は厳しい人だった。素直にそう思う。できないことがあればできるまでやらせる、見守ってはやるが手伝うことはしない─そういう姿勢だった。
「お前は才能がある」
忘れもしない父の言葉。初めて、父の作った術の妖でない本物の妖を斬った時の、あの微笑み。当時の俺は5つになるかならないかだったが、今でも鮮明に覚えているのだ。
