【矢野side】
「いやー、『俺を置いて先に行け』ってやつ、前から言ってみたかったんだよなあ」
少年の憧れ?ってやつ。漫画や本でしか見たことのない、歯の浮くような台詞を実際自分が言える日が来るとは思わなんだ。
「主様、今は」
「わかってる、わかってる。生徒の命かかってんだ。本気でやる」
「…賢明な判断です」
人形一体ずつを見ればそう強くもないが、いかんせん量が多い。しかも不死身ときた。強いと言うよりは厄介な代物だ。
呪具なんて誰がそんな─
はた、と思い浮かぶ。
あの日、あの時から俺は壊れた。懐に有った日本人形。不気味な顔。まるでそれに、自我を乗っ取られていたような話。
妖を襲い、邪鬼へと仕立てあげ多くの命を狩った悪魔のような所業。
それをさせていたのは、人形だった。
「主様?」
「雪路。あのさ…これってもしかして」
「?ぬしさ…っ、危ない!」
