「あはっ、ば、馬鹿ですか!やめてください、もうっ─」
「僕は馬鹿だよ~?神は君が思ってるほど、賢くない」
ずっと愚かで、子どもで。
それに、欲しいものひとつ素直に欲しいと言えないし─とっても欲張りだし。
いつかくる別れに怯えて、逃げてしまうほど臆病なんだよ。
僕が二つ名をもつのも…きっとそう。
「ほんとに強くて、樹を守れるのは君だけだ」
「?すみません、声が小さくて聞き取れませんでした」
よくできた機械みたく聞き返す雪路に「なんでもない」と笑って立ち上がった。
「ちょっ…どこへ?」
「ん?水浴び」
頭を冷やしたい、なんて言えるわけもなく。水を浴びながら、遠く想うのは誰か。
「主様!」
家の中から聞こえる、お帰りなさい、と明るい彼女の声。その瞳に映るのはいつだって─
「…ばかだなあ」
─これだから、と息をつく。
水を止めてびしゃびしゃのまま家へ上がった。もちろん、怒られたけど。それもまた一興、だ。
時は暮れ六つ、逢魔が時。今日も一日、愉快で結構。
[龍神日録、壱 了]
